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謎の西宮市民、こうすけさんが西宮をお散歩。休日の散歩コースやデートのご参考に。 続・こうすけの西宮散歩 〜地元で過ごす週末〜

こうすけの Because it’s there

正月明けの風邪はなかなかにひつこい。だいぶ良くなったとはいえ、ゲホゲホと咳き込む日々は続く。それならば、家で布団にくるまって安静にしているのが良いのだろうが、せっかくの休日、理由もなくどこかに出かけたい衝動にかられる。

 

さてさて、どうしてどこかに出かけたくなるの?

 

Because、、、、、、、、

 

午前中はしっかり寝ておきお昼よりお出かけ開始。本日のお出かけ先は山。とくに理由もない。西宮の山といえば甲山だが、今回目指す山は鉢巻山。鉢巻山???。そんな鉢巻山をご存じない方のために今回は鉢巻山のガイドをいたしましょう。

 

鉢巻山に登るには市内からであれば鷲林寺から芦屋の奥池経由でも、船坂から船坂峠を経て六甲全山縦走路を西に進んでもいい。もちろんその他にもいろんなルートが考えられる。どのルートを選ぶかは人それぞれ、そこに個々人の流儀がある。

 

それでもって私は芦屋から芦有道路をいく阪急バスに乗車。一番楽ちんなルートを選択する。これがこうすけの流儀。

 

バスの中は有馬温泉へ向かうグループで満席。愉しそうな会話が弾んでいる。右に左にカーブを繰り返しバスは坂道を登っていく。芦有道路に入り奥池を過ぎると左の車窓には大阪平野が広がる。ここから見る甲山はずいぶんと可愛らしく、親指でプチっと潰すことができそうである。

 

車窓から見える大阪平野

 

「宝殿橋」というバス停で下車。バス停には冷たい風が吹き、先ほどまでの暖かい車内が恋しくなる。涙目でバスを見送る。ここ「宝殿橋」バス停は西宮市に位置しており、標高は710m、市内で一番高い所にあるバス停である。

 

宝殿橋バス停前

 

バス停からは県道を歩く。車の通行量はそれほど多くないが、歩道もなく見通しの悪いカーブが連続するので注意して歩かなければいけない。

 

県道の風景

 

小さな橋の上に西宮署と芦屋署の管轄の境界を示す標識があり、西宮市から芦屋市に入ったのだと分かる。この辺りは西宮市と芦屋市の境界が複雑に入り組んでいるのだが、しばし進むと西宮市と芦屋市の市境を示す標識が現れる。ここから先は芦屋市とのこと。あれ?さっき芦屋市に入ったんじゃなかったか?警察管轄の境界と市の境界とは違うのだろうか?よくわからないが先に進む。

 

ここまでは西宮署、ここからは芦屋署の看板

 

さらに進むと、ここから先は西宮市だと示す標識と赤い鳥居に出会う。県道とはここでお別れし、白山神社と書かれた鳥居をくぐり山道に入る。

 

道路脇にある赤い鳥居

 

山道は笹に覆われており、風に揺らされ笹の葉はザワザワと音をたてる。

 

小竹(ささ)の葉はみ山もさやに乱れども

吾(われ)は妹(いも)おもふ別れ来ぬれば (柿本人麻呂)

 

その音を聞くと万葉集にある人麻呂の歌が思い出されるのだが、吾が妹こと妻は今日はパートに出て労働に励んでいる。私一人こうやって自由気ままにお出かけさせてもらって申し訳ないと思いつつ歩き続ける。足元には霜柱がキラキラ輝き美しいが、それをバリバリザクザクと音と感触を愉しみながら踏み潰していくのである。

 

笹の山道

 

笹の山道の先には小さな神社がある。石宝殿こと白山神社である。この地は芦屋川、住吉川、仁川、船坂川の分水嶺にあたり、古くは雨乞いの祈りの地でもあった。ここに雨が降れば阪神間の広い範囲で公平に水が行きわたる訳でEverybody Happy!!昔の人はこの地の地形上の特質を知っていたというのには驚嘆する。越木岩のお百姓さんたちが雨乞いのために石のお社を建てたとの民話があり(西宮市のホームページから「ふるさと民話・石の宝殿」に詳しい)、それが石宝殿。ちなみに西宮神社の本殿の西、百太夫社の左隣に六甲山神社という小さな社があるのだが、それはここ石宝殿の方を向いている。

 

白山の宮と書かれた鳥居

 

また中世には白山信仰の山伏たちの修験道の霊山でもあり、天候に恵まれれば加賀の白山がここから見えるという。県立六甲山自然保護センターの展示物に六甲山から見える山として御嶽と並んで白山の名もあったのでまんざらでもないのだろうが、やはりここ、つまり西宮市内から白山が見えるとは信じ難い。本日も白山に比べればずいぶん近くの生駒の山々さえも雪雲に隠されている。一度好天時に大きな双眼鏡を持ってきて白山を探してみたいものである。そんな石宝殿こと白山神社は標高870m、市内で最も高いところにある神社である。

 

白山神社から見た景色

 

石宝殿からは六甲全山縦走路に出会う。目の前にぽっかりとトンネルでお腹をくり貫かれた鉢巻山が迫る。震災以前県道は鉢巻山の北側をくるりと巻いていたのだが、道路の損傷が激しく新たにトンネルが造られた。登山コースである六甲全山縦走路はトンネルの上にあるのだが、多くのハイカーはトンネル内を通行する。それは反則じゃないのと思われないこともないが、それも個々人の流儀によるのである。(なお、縦走路の一部は崩落しており危険なので、十分注意するかトンネル内を通るようにとの案内がトンネルの反対側にあった。)

 

鉢巻山のトンネル

 

トンネルのおかげで人通りのすっかり少なくなった縦走路は荒れ気味で、道の両側の笹が覆い重なり道を隠している。新田次郎の小説「孤高の人」の主人公加藤文太郎もこの道を駆け抜けたのだろうと思いを馳せながら笹をかき分けて進む。すると三叉路に至り、そこには縦走路を明らかにする案内板がある。今日の目的地は鉢巻山、名も記されていないが×印の方に進めば鉢巻山に至る。

 

三叉路の案内板、それぞれ六甲山、宝塚、☓

 

三叉路から3分もせずに鉢巻山(898m)の頂上に、やった~登頂成功!万歳三唱でもしたいところだが寒い風が吹き荒れ縮こまってしまう。山頂には関西電力の六甲無線局のアンテナと「鉢巻山」と書かれたプレートが木ぶら下がっているだけで、特に展望が良い訳でもないし、ベンチがあったり休憩できる場所でもない。そんな鉢巻山は西宮市の最高峰なのである。今、自分は西宮市で一番高い所に立っているのである。

 

トンネルができて縦走路を通る人も少なくなり、ましてや×印をつけられているこの頂に立つ人は数少ないだろうし、普通の人はここに来ても何の感慨も湧かないことだろう。ここから西にほんの500m離れたところにあるピークが六甲最高峰(神戸市、931m)であり、そこには多くのハイカーが足を運んでいることだろう。対照的な山の佇まいだが、宮っ子だったらこの頂に立つとなんともいえない感情に包まれるはず。宮っ子の血が騒ぐ。

 

あまりにも風が冷たいのでゲホゲホと咳き込む。この頂を通り越して市内に吹いていく風に私の風邪を託そう。人にうつせば治るとかいうではないか、西宮市民のみなさん、ごめんあそばせ。

 

木にぶら下がった「鉢巻山」と書かれたプレート

 

Why did you want to climb Mount Everest?

(どうしてあなたはエベレストに登りたかったのですか?)

 

新聞記者にそう訊かれた登山家ジョージ・マロリーはこう答えたという。

 

Because it’s there.

(そこに、それがあるから。)

 

そことは、エベレストのことを指すのだが、いつしか「山」と言い換えられるようになって、「そこに山があるから」という名言が出来上がった。マロリーと比べては恥ずかしい限りだが、西宮で一番高い場所がそこにあるから、こうすけさんもここに出かけたのである。さて、下山だが、縦走路を西に進んでもよし、東に進んで宝塚や船坂に下りてもいい。南へ下りて芦屋川や岡本を目指してもいい。登りに個々人の流儀に任せた様々なルートがあるのと同様に下りにも様々なルートがある。私はというと北に有馬に下って、さくらやまなみバスで西宮市内に戻ろうかな。

 

Because Onsen is there.

 

温泉というのは明確な理由である。

今日のオコトバ

そこに山があるから。

(ジョージ・マロリー)

英国の登山家ジョージ・マロリーの言葉。当初は「そこにエベレストがあるから。」という意味であったが、今では「山」一般を指す言葉になった。理由もない理由というものもあるんですよ。就職活動で志望理由を答えるのに窮したら、「そこに御社があるから。」と答えよう。